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次世代を担う実力派ビスポークテーラー大山翔吾(Via Bespoke)

今、次世代のテーラーとして着実に力をつけて注目を浴びている人物がいます。銀座高橋洋服店、マルキースと老舗テーラーで修行をし、日本人のエッセンスを大切に物作りをしている大山翔吾さんです。今回、大山さんとタッグを組んでいるオーダーサロン「COSANEVE(コーザネーヴェ)」代表・小林さんのご紹介のもと、大山さんに服作りについて訪ねてみました。

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レディースやコレクション衣装作成を経て、紳士服の世界へ


-大山さんが服作りを始めたのはいつですか?

服作りを一番最初に始めたのは、高校生の頃でした。その当時は、買ってきた服をバラバラに解体してパターンを取って、また同じ様に縫えば洋服になるだろうと思って作っていました(笑)その後は、美術大学、文化ファッション大学院大学の一期生として入学をして、舞台衣装やレディースの衣装、コレクションを主に作っていました。

 

-本格的に紳士服を作り始めたのは学生を卒業した後だったんですね。

そうですね。卒業してからしばらく洋服を作っていない時期があったんですが、「どうせ服を作るなら一番難しいと言われている“紳士服”を作りたい」という気持ちがあり、まず老舗のテーラーである「銀座高橋洋服店」にて縫製の基礎を学びました。

 

-銀座高橋洋服店と言えば、創業100年を超える老舗のテーラーだと思うのですが、何かきっかけがあったのですか?

学生時代から婦人服を作ってきましたが、時代の流行を追う洋服に違和感を感じ、「自分の作りたい洋服と違うな」と思いました。色々と悩み、大学院の先生に相談をした所「大量生産ではなく、本質的な洋服“紳士服”」についてアドバイスを頂き、銀座高橋洋服店をご紹介して頂きました。今までの婦人服とは全く作りも違うことから、本当に紳士服の難しさや奥深さを目の当たりにしました。それでも、目の前のお客様の顔が見えて本当に求められている洋服を作れる喜びを知り、終わりの見えない紳士服に引き込まれていきました。

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老舗テーラーで日本の技術を継承


-いつ独立をしたのですか?

2015年4月に独立をしたと同時に、南青山のテーラー「マルキース」に技術を受け継いで欲しいとの話があって、兄弟子と共に自分の仕事もしながら働いていました。このマルキースが本当に凄い所で、完全紹介制のテーラーで顧客には長嶋茂雄さんなども抱えていて、長嶋さんが国民栄誉賞を受賞した時もマルキースが仕立てたスーツをお召しになってくれました。ここでは縫製から裁断まで改めて勉強になる事が多く、在籍している師匠がそれぞれ背景が違うんですが、そこで色々な考え方や技術を学ぶ事が出来ました。

 

-大山さんのスタイルはこのマルキースで確立されたと言っても過言ではないですね。

実際の所、イタリアに留学した訳でもなく、イギリスに留学した訳ではありません。純国産のテーラーなんですが色々試行錯誤しながら、ようやく自分の型が見つかってきたのかなと思います。

 

-テーラーと言っても意外と分業制の作業が多く、丸縫い出来る職人は多くはいませんよね。

確かに、裁断も縫製も出来る職人はあまりいないと思います。顧客の注文を直接聞いて、裁断、縫製と自分で行えるからこそ、顧客との会話を大切にして、意思の疎通を密に取る事を意識しています。

 

-大山さんが服を仕立てる時に大切にしている事は何かありますか?

服が主張しすぎない事です。ブランドだけが目立ってしまうような服は作りたくない。“中庸”をとても大切にしています。だからといって、誰にでも似合うのでなく、あくまでその人に合ったスタイルを提案出来るように心掛けています。ワードローブにあって気軽に手が伸びる。そんな服を作りたいです。

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中縫い風景


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-大山さんは中縫いを行う時に、何か意識している事はありますか?

中縫いは仮縫いを挟んだ二度目の調整になりますので、仮縫い時に見つかった修正点が綺麗に収まっているかを確認をします。また、イレギュラーがなければ中縫いが終わればお納めになりますので、お客様に仕上がりのイメージを持ってもらえるよう工夫しています。しつけ糸を黒にしているのもその理由です。

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写真でも分かりづらいですが、黒いしつけ糸が施されています。

 

-確かにしつけ糸が黒になっていますね。これだとイメージが付きやすくて嬉しいですね。

 実際、海外のテーラーではこの様な仕掛けをしているテーラーはあまりないと思います。仮縫いで黒い糸を使用する事で、お客様がより完成に近いイメージができるように使用しています。

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-アームホールまで外すのは、ビスポークならではの風景ですね。

肩周りは着心地を大きく左右しますし、後々の修正も難しい部分ですので、アームホールの部分がしっかりとお客様の体に合っている事を確認します。今回は実際にアームホールのカマを5mm下げる調整を致します。たった5mmでも着心地は全然変わってきますし、この数ミリの調整こそがビスポークの強みと醍醐味でもあると思っています。

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-その後、肩線、襟としつけを外して最後の確認をするのですか?

はい。アームホール、肩線、襟の順番にしつけを外していき、ほんの少しの皺も見逃さないよう集中しています。パーツを外さないと分からない事も多いですからね。後はお客様が感じるフィッティングの印象を伺い、修正点を見つけ出します。

 

Via Bespoke完成後のスーツ

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グレーにブラウンのペーンが入った3ピーススーツ。中庸を大切にしていると語っていた大山さんの仰る通り、華美なデザインは控える事で着る人を最大限に引き立たせています。

 

「本物を作ろう」COSANEVEとの出会い


-小林さんとの出会いはどこだったんですか?

出会いのきかっけはINSTAGRAMのメッセージでした。検索のオススメの写真が出てくる所に小林さんが投稿したトニックやスーパーブリオなどの本物のヴィンテージ生地がずらっと並んでる写真を見つけました。普通では考えられない貴重な生地が沢山並んでいて思わずフォローさせて頂きました。すると、COSANEVEから興味を持って頂き、お話を重ねるうちに一緒に仕事をするようになりました。それがかれこれ一年前ほどのことです。

 

-COSANEVEと一緒に仕事をしようと思った理由は何かありますか?

一番は「本物を作ろう」そこが合致をしたのが大きな理由です。COSANEVEの魅力は復刻ではなくあくまでも、オリジナルのヴィンテージに拘った生地を使用している事だと思います。価値のあるヴィンテージ生地をMTMではなく、ビスポークとして職人に昇華させてくれるのはとても光栄だと思います。また、そういった所からCOSANEVE代表の小林さんは職人を理解し、とても大切にしてくれているのを物凄く感じます。

 

-ここまで希少なヴィンテージ生地を扱うのは難しいですよね。

COSANEVEで取り扱うヴィンテージ生地であるドーメルのトニックなどのモヘア混の素材は熱や圧力が必要なために難易度が高いですが、その分テーラーとしてやりがいを感じます。また、イタリア製のSuper180’sや200のような原毛が細い生地も扱いにくい生地だと思います。MTMでは既成の芯や糸締りの良すぎるミシンで縫い上げると、せっかくのオールドの生地の風合いを損なってしまう可能性もありますので、手間はかかりますがくせ取りなどをしっかりとして生地を大切に扱いたいと思っています。職人だからこそ扱える生地だと思うと身が引き締まる思いです。

 

-最後になりますが、今後の目標はありますか?

日本のテーラーは50代、60代の方はほとんどいなく、40代のテーラーが最前線で活躍している状態です。私は教えて頂いた技術をしっかりと自分の物にして、それを次の世代のテーラー達にも残していければと思います。また、パターンオーダーを行うお店も増えてきて、オーダーの窓口が広がっている事はとても良いことですが、ワンランク上のビスポークにも興味を持って頂けるよう魅力を伝えていきたいです。

via bespoke

Via BespokeではDORMELやHARRISONS、 DRAGOなどのバンチを含め反物の生地も用意されていました。また、カシミアとビキューナの4-PLY生地など、男心を擽る物珍しい貴重な生地もありました。

 

最後に…


インタビューをしていても謙虚に受け答えをして頂ける大山さんを見て、その姿勢が物作りにも表れていると感じました。“中庸”を大切にしていると語る通り、そのビスポークのスーツから暖かさと誠実さが伝わってきて、10年、20年着れる服はこういう物なのだと納得することが出来ました。また今回オープンしたアトリエには、コーヒーショップ等も併設されており、注文するだけでなく紳士服についてゆっくり語り合いながらくつろげる空間でした。是非、足を運んで見て下さい。

 

PROFILE プロフィール

via bespokeVia Bespoke代表 大山 翔吾(おおやま しょうご)
17歳より独学で衣服製作を始め、テキスタイルデザインとレディースのファッションデザインを学んだ後、紳士服製作の道に入る。創業100年を越える老舗テーラーで縫製技術を学んだ後、現在も青山のテーラーでジャケットの職人として勤務する傍ら2015年よりVia Bespokeを設立し現在に至る。
Via Bespoke
〒213-0033 神奈川県川崎市高津区下作延1-1-7 nokutica office3
info@viabespoke.com
via bespoke.com

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