ファッションにおいて、その分野での本質を見抜くには一流のものと触れ合わなければなりません。何故ならば本当に上質な物に出会わなければ、数多ある商品の良し悪しを判断する事などできないからです。一流を知り、必要なディティールや歴史を学び、無駄なデザインを排除していくのです。今回、ご紹介させていただく「EDWARDGREEN(エドワードグリーン)“の名作DOVER(ドーバー)”」は高級紳士靴の中でも一際光り輝く逸品です。その魅力や特徴を紐解いていきましょう。
「EDWARDGREEN(エドワードグリーン)“DOVER(ドーバー)”」とは
エドワード グリーン社のドーバーと同じ雰囲気の革靴は見当たらないはずです。その理由として、まずはじめに32ラスト。そして、2番目に特徴的なモカ縫い部分があります。スキン・ステッチと呼ばれるその手法は、ハンドソーン(手縫い)で無くては成しえないものです。32ラストは、エドワード グリーンが保有するラストの中でも、かなり古くから現存しているラストの一つです。前半部分は少し短く、後半部分はやや長く、そしてつま先は、ややスクエアトゥの形状となっています。
「DOVER(ドーバー)」の始まり
ドーバーのスタイルは、エプロンフロントやノルウェージャンシューズとも呼ばれ1930年代のロンドンで大流行しました。この靴の原型は、ノルウェーの漁師が履いていたものであり、エスクァワイアの伝説的な編集者O.E.ショーフラーによって1930年代中頃にこのノルウェージャン スタイルの靴がアメリカに紹介されました。そして当時アメリカを旅行していたロンドンからの観光客によってイギリスに持ち帰られ、またたく間に人気のスタイルになりました。エドワード グリーンのドーバーのデザインも、このころ誕生したモデルと言われています。
「職人の完璧なる手作業」
ドーバーを語る上で、重要な項目が手縫いです。その独特な手法は、3辺の革の断面を合わせ、つま先のセンターは革の接合面を飛び出さないように慎重に縫われています。スキンステッチ、ライトアングルステッチ、ライトウェイトステッチとも呼ばれています。職人の技術は勿論、良い品質の革である事も同時に求められます。モカ縫いの部分は、革の内部をすり抜け縫われていきます。ベテラン職人でも1日に4足分縫うのがやっとの非常に手間隙かかった価値のある仕様なのです。
「価値の変わらぬ物」
すべての工程に携わる職人全員の心意気が集まったドーバー故に、多くの方が心惹かれるのだと思います。永く共に歩むのであれば、共に歩む時間は長ければ永いほど良いのではないでしょうか?ワインやウィスキーが熟成に時間を要するのと同じように、履いて馴染ませ、履き続けながら、メンテナンスをし、経年変化を共に歩む。気が付けば、10年、20年と時が流れます。いつしか、子供は親と同じ道を辿るかも知れません。手入れの行き届いた永く履きこんだ靴が玄関先にあれば、きっと将来自分の子供にもその価値は伝わるはずです。
「DOVER(ドーバー)」の特徴を紐解く
「DOVERのみに許された伝説の32ラスト」
「細部まで均等に縫われたステッチ」
「究極の曲線美」