「一文字に始まり、一文字に終わる」
靴の世界では、それほどストレートチップ(通称:一文字)の存在感は特別だ。特に内羽根のストレートチップは冠婚葬祭を始めあらゆるシーンにおいて礼を失することがない品格と奥ゆかしさを兼ね備えたデザイン。特にフォーマルな場であれば、間違いなく選ばれるデザインと言える。それ故にストレートチップというものは選び手の”センス”が出るものだ。今回は抑えとけば間違いないストレートチップのオススメをご紹介。
ストレートチップの有能性
ストレートチップとはトゥ(つま先)に横一文字(ストレート)のラインが入ったデザイン。
黒のストレートチップは「最もフォーマル」な形状で「クロスト」とも言われる。冠婚葬祭にも使えるので、一足あると突然の場面でも慌てずに済む。フォーマルに使えるくらいなので、印象としては「お堅い」イメージになる。さらにモーニングを着用する場面では、「内羽根(ウチバネ)」というヒモを通す部分が外に出ないものを選びましょう。外羽根(ソトバネ)はよりカジュアルになる。
左が「内羽根」、右が「外羽根」。ビジネスシーンで使うためのビジネスシューズは外羽根の形式のものが多い。
No.1 JOHN LOBB(ジョン・ロブ)「CITY Ⅱ(シティⅡ)」
スマートなオーバルトゥの名作ラスト「7000」を採用したジョン・ロブの王道ストレートチップ。目付けのないコバやミニマルなディティールなど、他の英国靴にはない洗練された雰囲気を持つ。モダンでスタイリッシュな、ストレートチップの頂点的存在。
No.2 EDWARDGREEN(エドワードグリーン)「CHELSEA(チェルシー)」
エドワードグリーンの傑作モデル「チェルシー」。シャープで現代的なラスト82を使用したモデルのブラック。デザインの特徴はレースステイの脇に施されたスワン・ネック。白鳥の首を思わせるようなステッチは、1930年から変わらないデザインになっている。
No.3 Church’s(チャーチ)「CONSUL(コンサル)」
「CONSUL(コンサル)」は、シンプルなストレートチップ。シンプルながらも存在感のある佇まいから、「コンサル=領事」というモデル名となったそう。ストレートチップは、フォーマル、ビジネスでは必携のデザインなので、チャーチのなかでも幅広い世代に渡り人気のモデル。
No.4 JM WESTON(ジェイエムウエストン)「300」
人気の「#300 ストレートチップオックスフォード」は、1930年代から愛され続けているアイコン的なモデルのひとつ。すっきりとしたクラシックなシルエットに、ラウンドトゥに施されたダブルのステッチラインがユニークな表情を与えている。現代的なスタイルを取り入れた、ラバーソールをご提案。シンプルなブラックは使いやすさ抜群。
No.5 Crockett&Jones(クロケット&ジョーンズ)「AUDLEY(オードリー)」
控えめな膨らみをもったエッグトゥは英国靴伝統のシルエット。セミロングノーズのスマートな木型だが、甲はやや高く、全体に丸みが強調されているためかシャープに見えすぎず、そのバランスがなかなか絶妙だ。パターンはたしかにベーシックなのだが、木型に品があって美しい。
No.6 Alden(オールデン)「5180 」
「バーガンディー」という焦げ茶に近いカラーが魅力的なオールデンのストレートチップをご紹介。こちらの革靴に採用されているSell Cordovanは日本の職人が本物を追求した最高品質のメンズ革製品。眩い光沢感が特徴で、お洒落なメンズスーツコーデに最適。スタイリッシュに決めることができる高級靴をお探しの方にはおすすめ。
No.7 Allen Edmonds(アレン・エドモンズ)「Park Avenue」
現在も同州南部ポートランドの自社工場で伝統的なグッドイヤーシューズを生産している。オリジナリティあふれる仕様や作りでアメリカントラッドシューズの佳き伝統を貫き続けるとともに、抜群のコストパフォーマンスにも定評があるブランド。返りのよい履き心地のコンフォタブルな靴でアメリカらしいぽてっとした印象はスーツスタイルに程よくスパイスを与えてくれる。
No.8 Enzo Bonafe(エンツォボナフェ)「EB-11」
セミスクエアなトウは低く抑えられ、甲の高さがほどよいこちらのラスト(木型)は、土踏まず部分のアーチと包み込むようなヒールカップによって快適な履き心地が得られる。日本人の足型に合うように設計されたラストなので、くるぶしが引っかかることも少ないはず。装飾性のないストレートチップですが、甲部分からサイドへの切り返しに呼応するようにシンプルなステッチが甲に入れられている。削ぎ落とされたデザインの中に色気が漂う一品となっている。
No.9 GAZIANO&GIRLING(ガジアーノ&ガーリング)「REGENT(レジェント)」
ダイヤモンド・キャップトゥはガジアーノ&ガーリングらしい靴の一つ。一文字のストレートチップと比べるとややデザインが強いように感じる方もいらしゃるかと思うが、実は英国靴のすごくクラシックなデザイン。ビスポークのディテールが随所にみられる。フィドルバックというウエストを絞りこんだ仕様や、ピッチドヒール、小さく絞られた履き口、オークバークソール等々マニアにはたまらない一品となっている。
No.10 Stefano Bemer(ステファノベーメル)「6360」
靴の修理工をしていた創業者、故ステファノ・ベーメル氏が1988年にイタリア・フィレンツェ創業した新興ブランド。古き良き靴をその手と目で体験、研究し尽くした同氏は以降、ス・ミズーラ、プレタポルテへとクリエーションの幅を広げていきます。人気の一つに挙げられる上質でクラシカルな雰囲気と卓越した技術が生み出す足入れの良さや、絶妙な履き心地は伝統的なハンドメイドの技術によるもの。また「革の魔術師」異名を持つ多彩な素材使いもその特徴の一つ。
最後に・・・
1~2万円の靴を1年ほどで履きつぶしていくというビジネスマンが圧倒的多数であることは、もちろん理解している。10万円前後の靴を購入するには、それなりの勇気が必要だろう。ただ、そのような靴を磨き、ソールを張り替え、自分の足になじませながら何十年も大切に履いていくことも男の愉(たの)しみのひとつではないだろうか。