皆様、この映画をご存知だろうか。全編に古き良き黒人音楽への愛が満ちており、ライブ・シーンを観ればこっちの魂も熱くなる。荒くれカウボーイの集まるバーで無理やり演奏する「ローハイド」から、演奏シーンのクライマックスの「エヴリバディ・ニーズ・サムバディ」エンドロールの「監獄ロック」まで実に充実。音楽のみならずコメディの鬼才ジョン・ランディスの演出だけに過剰なまでの爆発!スピード感溢れる破壊!爆発!破壊!爆発!破壊!が随所で炸裂する!そんな最高な”ブルースブラザーズ”をご紹介させてください。
あらすじ
ジョリエット・ジェイク(ジョン・ランディス)は強盗を働き、シカゴの刑務所にぶち込まれた。刑期を終えて出所したジェイクを待っていたのは、孤児院時代からの弟分エルウッド(ダン・エイクロイド)で、二人は孤児院に出所の挨拶に行く。そこで、孤児院が5000ドルの固定資産税を払えないため、立ち退きを市当局から通告されていることを知る。孤児院を救うため二人は援助を申し出るが、真っ当なお金でなければ受け取れないと院長に追い払われて・・・・。
超痛快な音楽エンターテインメント
とにかくストーリーはさておきの映画である。ジェームズ・ブラウン、レイ・チャールズ、キャブ・キャロウェイ、アレサ・フランクリン…。一体どこまでR&Bの大物が出てくるのかという豪華メンバーであり、スター・ウォーズのレイア姫役である、キャリー・フィッシャーがマシンガン片手に大立ち回りを演じる。ジョン・リー・フッカー、チャカ・カーンに、何故かイーグルスのギタリスト、ジョー・ウォルシュまでがチョイ役の囚人役で出ており、音楽ファンは狂喜するようなシーンの連続である。
そしてシカゴの納税課職員は何とスティーブン・スピルバーグであった。そういえば「ビバリー・ヒルズ・コップ3」にも遊園地の客としてチョイ役でジョージ・ルーカスが出演していたが、こういったところはハリウッドお得意の隠し球なんだろうと思わずニヤついてしまう。これといったテーマらしきものも感動的なクライマックスもなく、破壊と音楽にまみれた痛快娯楽作品として最高のエンターテインメントである。
音楽ばかりではなくブラックユーモアに溢れた場面展開の妙
ジョン・ランディス監督が絶頂期に撮った音楽映画の歴史的傑作!ニューウェーブが台頭し始めたこの時期に、ブルースのカッコ良さを若い連中に伝えるのには最高のキャスティングだろう。カーチェイスのシーンは間違いなく「フレンチ・コネクション」のパクリである高架下のシーンが演出され、同じ種類のパトカーを惜しげもなく次々と破壊してゆくリズム感のあるカークラッシュも気持ちがよい。最後の税務署のシーンでは戦車やヘリまでが出動し、何千人という数の追跡者が二人を追い詰めてゆくのだが、「ワーーーーーッ!」という追跡者の一斉の叫び声が、不思議と腹を抱えて笑うような面白さを含んでいるのだ。
実は着こなしも奥深い・・・
やっぱりブルースブラザーズといえばこの着こなし。全身黒づくめ。黒のラペルの小さめなジャケットに黒のナロータイ、そして黒いハットに黒いサングラス。一見すると、葬式の様でかなり素っ気ない印象。しかし、そんなスタイルも2人が着ていると何故かとてもかっこよく見えるのだ。これはRENATAでも度々お伝えしていることだが、着こなしがその人物の”スタイル”になっているということなのだろう。おそらく、この映画において2人がこの”スタイル”では無かったらこんなにも素晴らしい作品にはなってなかったことだろう。私自身もこの映画を見たことで、自分自身の”スタイル”を見直し、客観的に考える様になった。そういった視点で捉えてみると違う角度から2人の表情が見えてきて、一層楽しんでいただけることだろう。
最後に・・・・
黒い帽子に黒いサングラス、黒にネクタイに黒いスーツという二人のファッションは視覚的に忘れられるはずもなく、その後の「マトリックス」や「メンインブラック」などの数々の”名作”がオマージュしている。様々な映画に影響を与えた、『ブルースブラザーズ』。是非一度、ご視聴あれ。