さかのぼれば早い人で学生時代、どんなに遅い人でも20歳までには”ネクタイ”を締めた事でしょう。一般的に冠婚葬祭やフォーマルな場面ではネクタイを締める事が”ルール”とされていますが「何故ネクタイを締めるのか?」という本質を皆さまは考えたことがあるでしょうか?洋服の中で一番正体の分からない存在も又、ネクタイなのです。それでも人が皆、ネクタイを締めるのはその人の個性を一番表すからだと私は思います。今回はそんなネクタイの歴史や部分名称、使われる生地をまとめさせていただきました。
ネクタイの歴史
2世紀にローマ兵士は元々はお守り代わりに巻いていた布、防寒具に巻いた布がネクタイの起源と言われています。その後、ルイ14世がクロアチア兵士が首に巻いていた布に注目し、それが宮廷内に広まり徐々に定着していきました。そもそも、フランス語でネクタイを表すクラバットは元々クロアチア兵の意味です。そして、イギリスのダービー卿により現在の形のネクタイが完成しました。尚、日本に持ち込んだのは、ジョン万次郎です。
ネクタイの部分名称
1.「大剣(ブレード)」ニットタイでは剣先の無いものもありますが最近では剣先のあるニットタイが人気です。
2.「小剣(チップ)」小剣の長さをコントロールすることでネクタイの表情を幾重にも変化させることが出来ます。
3.「小剣通し(ループ)」ネクタイピンの代用として使われることが多いです。
4.「裏地(チッピング)」主にネクタイの生地に対してトーンオントーン又はコントラストで色合わせが行われています。裏地なし仕様は”スフォデラート”と呼びます。
5.「かんぬき止め(バータック)」芯地を固定するための太い糸の事です。
6.「たるみ糸」糸が動くことにより力を分散、縫い糸とネクタイの生地の破損を防いでくれます。
ネクタイの縫製
ネクタイは生地をバイアス(斜め、生地に対して45度)にカットします。バイアスにカットする理由は、斜め方向への伸縮性が生じ、結びやすさと解きやすさが向上するというのが大きい理由です。その為に皺や捻じれに対しての回復力が早いのもバイアスにカットする理由の一つです。生地からパーツを無駄なく取れるとの実用的な一面もあります。
ネクタイの生地の主な織り
1.「サテン」縦糸、もしくは横糸のどちらかを長く表面に浮かせて織り上げ、スムーズな肌触りと光沢感を高めた生地。美しいドレ∸プが魅力です。
2.「ツイル」綾織の生地。縦糸が横糸の上側3本、下側1本をまたいで織られるのが主流で、斜めに走る畝裏が特徴です。
3.「ジャガード」ジャガード織機で織り上げた生地の総称。パンチカードを元に繊細な織柄や生地表面の複雑な凹凸を実現します。
4.「フレスコ」多孔性の織りで軽くて通気性に優れます。凹凸、ハリがあり清涼感を演出してくれます。
ネクタイの巻き方
1.「プレーンノット」言わずもがな現在最も主流な巻き方。セレクトショップなどのマネキンはほとんどがこの巻き方をしています。最もクラッシクなネクタイの結び方で簡単にできて、どんなスタイルのネクタイやシャツの襟にも合うので、最も広く愛用されている結び方です。結び目を小さく、ディンプルをうまく作るにはテクニックが必要ですがうまく巻けるととても綺麗に見えます。
※「ディンプル」ネクタイを巻いたときに作るくぼみの事。ネクタイをより立地的に見せ、陰影によって生地の質感もはっきりさせることが出来ます。ネクタイを結ぶ際にこの”ディンプル”を作るだけであっという間にこなれた雰囲気を演出することが出来ます。尚、弔辞ではディンプルは作らないのがマナーとされています。
2.「ダブルノット」はプレーンノットにとても似た結び方です。違いは、シンプルノットでは 小剣の周りを一巻きしかしない大剣(ネクタイのネクタイの幅が広い方の端)がダブルノットでは 二重巻きすることです。シンプルノットより結び目が厚いダブルノットは、ほとんどどんなタイプのシャツにも合います。ネクタイも、幅がとても太いタイプ以外のほとんどのネクタイに適しています。プレーンノットよりもノット部分が華やかでエレガントさがアップします。一般的に市場に流通しているネクタイの長さはこの巻き方が一番巻きやすいです。
3.「ウィンザーノット」ウインザーノットはあらたまった大切な機会に適した結び方です。典型的な英国調スタイルのこの結び方を流行らせたのはウインザー公でした。
結び目がふっくらと大きめに仕上がるので、クラシックなラペル幅の広いジャケットに合います。
ネクタイの柄別ドレスコード
ネクタイは無地に近いほどフォーマル度が高く、ワンポイント、ドット、小紋柄、レジメンタルチェックと続きます。柄に関わらず”シルバー”は最もフォーマル度が高く、礼装用として認知されビジネスシーンでも広く使われるようになりました。
最後に・・・
ネクタイは輸入合計2350万本。又、国内生産は570万本。中でもイタリアからの輸入量は約160万本、アメリカから12万本、フランスから10万本、イギリスから5万本。安価な中国製のネクタイがシェアを大きく占める中、イタリア有数のクラシコメーカーや国内有数の工場で生産されるネクタイなど、購入する前に備えるべき知識のほんの一部をご紹介させていただきました。少しでも参考にしていただけたら幸いです。
「クラシックなモノが存続してこそ流行なのだ。男の服における西洋と日本の大きな相違は、西洋は常にクラシックと流行が共存し、日本は流行に依存しがちな点だ。だからクラシックな服が理解しにくいのだ。ー落合正勝」
洋服の中で最も謎で不明な”ネクタイ”ですがこういったクラシックなものを理解し共存していくことが真の意味で洋服を理解することなのではないでしょうか。